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白黒サイクル

ロボットとジャグリングのブログ。

からっ風SS 2024年版

かわさきロボット競技大会のロボット からっ風SSのまとめです。

今年は今までの集大成ということで、やっと壊れにくい機構になり試合できるようになってきました。
来年からルールの大幅改定ということで、今の構成は今年で最後かもしれません。

※CADデータは一部未完成だったり、写真と微妙に違うところもあります



 

◆コンセプト
いつも通り、長いアームでスタートダッシュを決めれば
 ・相手が大型 → 倒立スタートが終わる前に攻撃できる
 ・相手が小型 → リーチ差で有利
となり、強いでしょ。という発想で作っています。
(最近は大型機もスタートが早くなって有利を取りにくいですが)

スタート姿勢から大きく展開するのが一番の特徴です。



   戦闘姿勢      スタート姿勢

基本的な構造や技術要素としては
・アーム:ロングロッド2本(スライダリンク)
    +カウンタ稼働機構(能動サスペンション)※アームの補助機構

・脚: うしとら脚12脚(スライダリンク)
     後足:オムニホイール 前足:ウレタン
・その他:
  横展開機構
  リンク式サスペンション
  サーボ制御、姿勢制御補助、スタート補助(マイコン)

となっています。

リンクサスやロッドは第12回大会で優勝した「舞姫」の影響を受けています。
以前ロボコンマガジンで特集されていました。




◆メインアームのリンク
詳細は企画提案書参照。
書き方は2016年の記事参照です。→ スライダリンクの設計方法


数年ぶりにリンクを見直し、アームの振り角を小さくしました。
このリンクの特徴の一つに、アームを振り上げた後、リンクの早送りで戻せるという特徴があります。アームを振り上げた後のスキを小さくできるのがメリットです。

ただ、この振り上げ→早送りの反転動作があまりにも早いため、本体が浮き上がるレベルの衝撃が入ることが問題になっていました。
特にアームギヤボックスごと上下に動かす可変機構へ衝撃が入るため、ここの強化と衝撃の低減で数年間苦労していました。
ショックアブソーバーをつけたり、角加速度制御を入れたりしましたが、なかなかうまくいかず。
最終的には上記の振り角修正と角加速度制御で反転時の衝撃を減らし、自作ギヤボックスを強化して壊れないようにしました。


<アームリンクの問題点>
上記の反転動作の衝撃が大きいことに加え
水平付近が減速リンク、垂直付近が倍速リンクになっているため、
水平付近しか大きなトルクが出ないというのがデメリットになります。
あとリンク比の設計が非常に面倒でした。


◆アームギヤボックス
ギヤで190まで減速し、スライダリンクでさらに2倍(水平付近)にしています



モータ: RS380 3個
1段目:
  小歯車: m0.5 歯数14(RC用モータピニオン)
  大歯車: m0.5 歯数58(教育歯車)
2段目: KUギヤボックス 1/24 ※ツカサ電工製ギヤードモータの一部
3段目: 
  小歯車: m2.0 歯数12(アルミで自作)
  大歯車: m2.0 歯数23(アルミで自作)
4段目: スライダリンク


KUは遊星ギヤボックスで、非常に頑丈です。→過去の作例

外側のケースを外してギヤだけ使用することで、フレームもコンパクトになります
こんな感じの部品をナイロン焼結の3Dプリンタで作って、うち歯車をはめ込んでいます。

ギヤ比はいろいろありますが、ギヤ比に応じて中の遊星の段数が違うのが注意事項で、
今回のように無茶な使い方をする場合は2段のギヤ比(1/36まで)を使用するのがおすすめです。
また、遊星は出力軸が片持ちになると非常に弱いため、出力軸の端もベアリングなどで支持したほうが良いです。
からっ風SSでは、歯車ごとベアリングに入れることで、省スペース化と並行ピンの抜け止めをしています。


<ギヤボックスの問題点>
 KUのピニオンをモータから外してシャフトに再圧入する必要があるため、圧入がちょっと緩め。今まで数年間壊れなかったもの先日ピニオンが滑って破損。
ピニオンの圧入は接着等したほうがよさそうです。


◆カウンタアーム稼働機構
アームのギヤボックスごと上下に稼働する機構です。
・カウンタアームを上下に稼働(カウンタを接地させる、丘から逃げるなど)
・転倒復帰時にアームの可動範囲を補助(高減速型のスライダリンクなのであまり上がらない)
・サスペンション的な動作で走行中の衝撃を緩和(は実装できませんでした)


サーボモータを使ってはサーボが壊れ、サーボセイバーを追加したらサーボセイバーが壊れ、ギヤドモータを使っては周辺部品が壊れるなどなど散々失敗してきましたが、今回は自作ギヤボックスで故障しませんでした。





強度UPと小型化はKHKのロボット用歯車にあるLS0.5のボスに歯車を切る方法で、小型化&高強度化できたのが大きいです。
↓こんな感じ。治具の固定が甘く、歯が大きくなってしまったミスもありますが、それは次回以降の対策で。



◆カウンタアーム展開機構
脚ユニットが左右に展開するのに合わせ、カウンタアームも左右に展開します。
ポリカの弾性でスタート時は内側に畳んでいて、戦闘時はまっすぐになります。

昨年まではスタート後も、内側に曲がる力に対してはポリカの弾性のみで支持していましたが、
攻撃時にグネって曲がって横転することが何度か・・・。

そこで、今年は展開後にロックする機構を追加しました。
画像の半透明な赤部品がポリカで、変形させてスタート姿勢を取ります。
スタート後はポリカ横の赤い部品が外側に動かないようにロックされます。

    スタート時       戦闘時

◆横回転用カウンタアーム
横展開+ツインロッドと横回転アームとの相性が非常に悪く、試合するとほぼ負け確定だったため「横回転のカウンタより長いカウンタがあれば負けない」をコンセプトにカウンタを付けました。
この写真の右側に伸びている棒がそれです。
メインロットが絡め取られたときに、一定以上回らないようにする機構です。


※横回転の回転方向的に、画像の左側に着けることが多い

あまり試す機会がなかったので、効果の確認はできませんでした。
横回転のアームに引っかからないよう丸棒にしたほうがいいなどアドバイスをもらったので、
次回は何かしら修正する予定です。

アームの展開機構は気に入っていて、指定の位置にアームが来るとバネの力でスライドし、ピンと溝が噛み合うようになっています。

スタート時


スタート後



◆脚
脚機構はいつものベアカム+うしとら脚です。
数年前から使いまわしています。
主な特徴
・120度の円弧運動スライダ(うしとら脚)
・ベアカム
・クランク半径10mm
・足先半径60mm


<脚リンク>
ベアカム+スライダの構造です。
ベアカムはΦ2のピン3本で位置決め+中央のM3ねじで抜け止めとがたつき防止です。


<ギヤ比>
だいたい42くらい減速しています。

モータ: RS380 左右各1個
1段目:
  小歯車: m0.5 歯数10 (KHK製ピニオン)
  大歯車: m0.5 歯数60 (KHK製LS0.5)
2段目: 
  小歯車: m1.0 歯数9 転位+0.45   (KHK製LS0.5のボスから削り出し)
  大歯車: m1.0 歯数30 転位-0.5 (アルミで自作)
3段目(タイミングプーリーS5M):
  小歯車: S5M 歯数11(POMで自作)
  大歯車: S5M 歯数23(POMで自作)
4段目: スライダリンク


◆オムニ足
後ろ足はオムニにしています。
これにより、加速をある程度維持しつつも、旋回性能を高められます。
旋回時の脚の滑りが小さいので、モータの発熱も小さくなります。
構造ははウレタンワッシャー(内径2、外径6)をΦ2ステンレスピンに通し、その両サイドをPOMワッシャーで挟んでいます。
ウレタンを使用する理由は機械的強度と摩擦係数が高いためです。


メリットは
・旋回性能が高い
・モータの発熱が小さくなる(モータの数を減らせる)

デメリットは
・押し合いに弱い
・操作が難しい(旋回性能が高すぎる)
・丘に足を取られて進行方向が曲がりやすい
・普通の足裏よりはグリップが低い
・機構が複雑で、組み立てに時間がかかる
・ウレタンワッシャーが高価

旋回性能が高すぎるところは制御で修正しようとしていますがなかなかうまくいかず
(その前に人が慣れてきた)


◆ウレタン足裏
ウレタンゴムの注型で足裏を作っています。グリップが高いのでお勧め
今年はタケフレックスBRUSHを使用しました。
柔らかいけど千切れにくく、グリップも高いため足裏に向いています。
硬化時に気泡が抜けにくいのが難点で、人力脱泡機だと辛く、電動の真空ポンプを購入しました。
色は肌色みたいな感じで使いにくかったので染色していますが、推奨品が品薄だったため、他社のウレタン用顔料を買って使いました。

足裏の芯材はポリカの切削品と、3DプリンタのPA11(MJF)でテストしました。
タケフレックスBRUSHは若干剥げやすいらしく、ポリカはしばらく使っていると平坦な面が剥げてきました。
PA11(MJF)はポリカと同設計だと折れてしまったものの、補強してからは良好です。ナイロン焼結で表面が荒いため接着性が高いのが利点です。
PA11(MJF)のほうが楽なものの、コストを考えるとポリカで接着性を高める工夫をしたほうがよさそうです。



<材料探しの経緯>
一時期シリコンシーラントが流行っていましたが、シリコンシーラントで足裏を作ると走行練習した家の床が滑りやすくなる(気がする)ため、より強度・摩擦係数の高いウレタンにしました。
例:シリコンシーラントの足裏ウレタンゴムの足裏
その後、2019年から放置していたウレタンゴム脚のポリカ部品が割れた為、2023年に再度購入しようとしたところ以前のウレタンゴムは入手できず。
材料探しが始まりました。

選定基準は↓
・シリコーンゴムは種類があるものの、個人入手できる範囲では低強度なものが物が多く、選定が難しいのが難点。選定する際は硬化前の粘度が低く、硬化時間の長い物のほうが、綺麗に成型しやすいです。
・ウレタンゴムは少量販売しているメーカーが少なく、見つけた範囲では竹林化学工業(株)様のみ。
2023年から3種類の材料を試してみて、タケフレックスBRUSHに落ち着きました。
(より大きいロボットに使うにはタケシールK2Kがよさそう。)

[2023年に調査]
・フレンズシリコンⅡ ・・・ シリコーンゴム。硬化前の粘度が比較的低く、硬化後は柔らかく強度そこそこな良い材料でしたが、2024年に買おうとしたら廃品種に。
・タケシールK2K ・・・ ウレタンゴム。足裏としてはちょっと硬めですが、強度はあり良い感じ。硬いので摩擦は低め。ウレタンなのでそこそこ高価。

[2024年に調査]
・タケフレックスBRUSH・・・ウレタンゴム。柔らかく強度があり、摩擦も高い。気泡が入りやすい。ウレタンなのでそこそこ高価。

色々試した脚です↓

上から
・ウレタン切削+PCフレーム
・シリコンシーラント+PCフレーム
・フレンズシリコンⅡ+PA11(MJF)フレーム
・タケシールK2K(着色)+PCフレーム
・タケフレックスBRUSH(着色)+PA11(MJF)フレーム



◆横展開機構+リンクサス
横幅を広げる機構と、リンク式サスペンションを一体化しています。
この構造のメリットは倒立スタートしないのでスタートが安定すること、丘を踏んでも常に4脚が接地することです。

<胴体側>
 脚ユニットの根本が左右にスライドします。
 バネでテンションを貼っていて、スタート時はアームの一部に引っ掛けています。
 
<リンクサス>
 パンタグラフリンクの中央を固定すると、両端が点対称に動く特性を利用しています。
 展開時:左右同じ幅になるよう動きます
 戦闘時:左右の脚ユニットが反転する方向に動きます


最近主流の4独サスと比較すると、リンクサスの動作感は
 ・平地ではリンクが動かないためサス硬め
 ・丘で低速な場合は柔らかめ
 ・丘で高速に走行していると固め(バネ下質量が大きい&左右同時に丘に乗るとサスが機能しない)
となります。
特に左右の脚が同時に丘に乗るとリンクサスは機能しないため、良く跳ねていました。
これを防ぐために、前足には簡単な板バネサスペンションを入れています。
跳ねるエネルギーを吸収するだけでよいのでかなり固めに設定しています。



◆制御
<全体図>
大きく分けて下記の4モードに分けて制御しています。
特徴的なのはどのモードからも安全モードに入れることで、
試合中に予想外の動きや、アームが絡まったときに非常停止として利用しています。
特にアームの角度制御を行っている場合、絡まるとモータが焼ける可能性があるため重要な機能です。

・電源投入時の初期設定
・スタート時の動作(スタート姿勢の準備&スタート時の展開動作)
・通常の動作
・安全モード(動作無し&アームのトルクOFF)


<アームの角度制御>
アームの角度制御は、ざっくりと微分先行PIDと角度・速度のカスケード制御を合わせたPID制御です。
ただし、アームの操作レスポンスを優先するため、下記の場合でESCの出力を最大にしています。
 ・アームが水平付近
 ・プロポの入力角度が最大値

使用した制御方式を簡単に説明します。
詳細はより正確な資料を調べてみてください。

微分先行PID:
  通常のPIDで目標値(プロポの操作)の急な変動があると微分項は大きい値になるため、
       プロポの信号にノイズが乗るとアームがガチャガチャ動くことになります。
  そのため、Dゲインを上げにくい場合があります。
  微分先行PIDはDゲインのFBに操作量の微分を用いず、速度のみで計算する方法です。
  入力に急な変化があった場合でも、比較的滑らかに動作します。

  計算は主に下記の計算式になります。
  目標値の差分を用いないため、入力に多少ノイズが乗っても動きが滑らかになります。
   P操作量 = Pゲイン × (目標角度 - 現在角度)
   I操作量 =  Iゲイン × (目標角度 - 現在角度)+  I操作量(1つ前)
   D操作量 = Dゲイン × (現在角度 - 現在角度(1つ前)) 
         ※目標角度の情報が含まれない
   操作量 = P操作量 + I操作量 + D操作量

カスケード制御
  角度と速度を同時に制御する方法です。
  角度PIDで速度の指令値を計算し、それに合うように速度PIDでモータへの入力(電圧)を計算します。
  大まかな流れは下記です。
  プロポの信号(角度)→ 角度PID → 速度PID → ESCの指令値 → モータ(アーム)
                               ← 角度センサFB
  
  ここで、角度PIDの計算結果(速度指令値)の最大値に制限を加えることで、
  疑似的な角加速度制御を行っています。
  たとえば、角度リミットの270度に近づくにつれてゆっくり減速したい場合は、
  速度指令値の最大値を徐々に下げるようにしています。

<アームの水平制御>
能動サスペンションとして、アーム根元の可動軸を使ってアームが水平になるよう制御しています。
丘を乗り越えた時などに、下の画像の黄緑のフレームが一定の角度になる角度制御をしています。

ただ、今のところ反応が遅いため、面白さ以上の効果は無く・・・といった感じです。
MPU-6050(GY-521モジュール)のDMPが遅いのか、制御がうまくできていないのか。

<進行方向の制御>
オムニ足の影響で、丘に足を取られて進行方向が変わりやすいため、進行方向の角加速度の補助を入れています。
指令が直進でロボットが左に曲がったら、右に曲がって直進に戻るよう補正する機能です。
これもなかなかうまくいかず。


◆まとめ
アームがリンク制限になってから似たような機体を作ってきましたが、やっと試合で壊れないものができてきました。
気が付いたら、ちゃんと試合ができるまでに15年かかっていますね。



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CNCの防音BOX

引っ越しを機に防音BOXを新調したのでまとめます。
作ったのは2021年の話ですが、そこから2年くらい放置気味でした。

2020年まで使っていた初代防音BOXは防音性能が低いのと、
扉を開けるたびに切粉が飛び散るので、何とかしたいと思っていました。

製作の目標は
①防音性能を高める
②切粉が飛び散るのを防ぐ
③作業台が欲しい
④吸音材に切粉が付かないようにする
あたりです。

作ったもの:

  



アルミフレームで柱を作り、そこにMDF板をつけています。
こうすることで、掃除の時に分解しやすくしています。

CNCはオリジナルマインドのRD300です。


①防音性能

 底を21m、全周を板厚15mmのMDF+吸音材で覆っています。
 底に吸音材を貼ると掃除が大変なので、CNCの真下の板の裏に吸音材を入れています。

 また、床に振動が伝わっては意味がないので、防振は力を入れています。
 キャスタを通じて床に振動が伝わらないよう、2段階に制振材を入れています。
 1段目はおまけ程度で、普通の制振ゴム、
 2段目がメインで、ちょっと高めなエアーエアーダンパー(WF4016)を使っています。

 吸音材はYYT吸音ボードの板厚0.9㎝を使用しました。
 この吸音材は厚みごとの性能が公開されているので、厚みを選びやすいのが特徴です。
 (専門メーカーではなさそうなので、どこまで信頼できるかは怪しいですが)

 メーカーのページが見つからないので、性能はwebで調べてみてください。
 参考: amazonの製品ページ ※amazonなのでリンクが変わる可能性があります
 板厚は0.5㎝と0.9㎝では吸音性能に差がありますが、
 0.9㎝と2㎝は低周波以外あまり変わらないようでした。

 結果として、防音性能はいい感じです。
 A2017を削っていてもあまり気にならないくらいで、
 隣の部屋にいると換気扇のほうが音が大きいくらいです。
 ※換気扇の音がとても大きい

 A7075を削ると高音が目立つので、その点は改善の余地ありといった感じです。


②切粉が飛び散るのを防ぐ

 切粉が扉にくっつくと、扉を開けるときに切粉が床に落ちる問題がありました。
 この対策として、
 ・切粉が付着しやすいあたりを開閉しないよう壁を作成
 ・扉を斜めにし、切粉が付着しても防音BOX内に落ちる構造
 
 にしました。
 
 おまけで、扉の前に猫砂トイレマットを敷いています。
 今日敷いたので、この効果の確認はこれからですね。



③作業台が欲しい
 今まで防音BOXの上で作業していたので、ちゃんと机を作りました。
 板厚15mm+アルミフレームなので、そこそこちゃんと使えます。
 汚れたり傷がついて使いにくくなったら、新しい板に入れ替えやすいのが良い点です。
 
 作業台と防音BOX本体の間にはNCボックス(7)が入るくらいの隙間が空いています。
 いろいろ置けるので便利。


④吸音材に切粉が付かないようにする
 以前はホワイトキューオンという吸音材を使っていたのですが、
 これは切粉が表面に付着しやすい問題がありました。
 特に黒いポリカの切粉がくっつくと、内側が真っ黒に・・・。
 しかも取れないので、悩みの種でした。

 対策として、今回は内側に家庭菜園用の不織布を貼っています。
 これで切粉が付着しにくいのと、汚れたら剥がせばいいので、メンテが簡単です。




加工について

 MDFの加工はストーリオ様に依頼しています。
 穴無しのカットのみ依頼して、価格は全部で2万円くらい(2021年)でした。
 URL: https://www.storio.co.jp/materials-and-processing-type/plank-material#index-2
 加工精度は±1.5mmくらいで、特に調整等は必要ありませんでした。
 自分の穴開け精度のほうが悪いので・・。
 精度の資料: https://www.storio.co.jp/howtodiy/howto_plan



結果
 満足度の高い防音BOXになりました。
 作業性は非常によくなり、音も気になりません。

 使っていて気になった点としては
 ・熱がこもる
 ・扉を開けないと中の様子が分からない
 の2つで、特に熱のほうは対策しないとスピンドルの寿命に影響しそうです。
 保冷材でも貼って、アルミフレームを冷やそうかなと。


3Dデータ
 3Dデータも公開します。
 防音BOXで悩んでいる方がいましたら、参考までに。

 【注意】
 実物で調整しながら作ったので、部分的に3Dデータと実物の形状が違います。
 また、自分で使う用途のため安全には最低限の配慮しかしていません。
 使い方によっては、指を挟むなどけがの恐れがあります。
 本データの利用は自己責任でお願いします。
 以上に同意いただける方のみご利用ください。

 3Dデータ: CNC防音BOX.iges



 Fusion360で木材テクスチャを使うと中間ファイルに対応していないらしく、
 色は真っ黒になっていると思います。

以上

【かわロボ】スライダヘッケンリンクスライダヘッケンリンク(うしとら脚)の設計方法

からロボの足リンクの書き方です。

久々すぎてからっ風の脚リンクの書き方を忘れていたので、整理のため記録します。
CADはFusion360を使っています。



手順としては、
1. 普通の疑似ヘッケンリンクのリンクのリンク比を検討
 (180度回転するヘッケンリンクはリンクが反転するリスクがありますが、これに対してリンク比を修正したものを、ここでは疑似ヘッケンと呼びます)
2. スライダで疑似ヘッケンリンクを作成
3. スライダを曲げて、120度区間で完全円軌道を作る
 (スライダ一本のうしとら脚)
おまけ:スライダ2本のうしとら脚を作る(オリジナルに近いもの)
の順で設計します


【1. リンク比検討】

1.1 クランクとスライダの位置を決定
からっ風は
・クランク直径:20mm
・クランク中心からスライダの位置:31mm
としています。


1.2 4節リンクを書く
クランクから揺動節の距離:10.7mm
揺動節の長さ:約31.008mm ※作図で出しました
クランクから足裏までの距離:50mm

書き方はいろいろあると思いますが、からっ風はクランクが一番下になったときに足が最下点に来るよう揺動節の長さを決めています。

この場合の本来のヘッケン比は、クランクから揺動節の距離10mmです。
0.7mmクランクずらしていますが、クランク半径と比(0.7/10)をとって、ここでは7%上げと呼びます。
この値が小さいほど、脚を上げる角度が大きくなりますが、加工誤差などでロックする可能性が高くなります。スライダの場合も、スライダにかかる荷重が大きくなり、ロックしやすくなりますが、スライダのほうが比較的小さい補正にできるようです。
からっ風は7%上げで動かすために、スライダにΦ8のボールベアリングを入れて対策しています。




1.3 可動域の確認

脚の振り角が最大になるポイントを作図します。
今回はリンクを拘束した後、振り角を手入力して最大値を求めました。
振り角は72.9°+66.0°=138.9°です。
これが120°+αを超えると、120度のうしとら脚が作れます。
揺動節の長さを調整すると、前後の動作角度が変わります。
うまく調整するといいことがあるかもしれません(未確認)

この時点で足裏を書けば、4節の疑似ヘッケンリンクです。

154.3°と18.2°は後ほど使います。



【2. スライダ疑似ヘッケンを作成】

2.1 スライダ溝を書く
脚が最下点になる位置で固定する(書きやすい位置でOK)
先ほどの154.3°と18.2度と4節リンクの長さを使用し、脚リンクから見たスライダの位置を書きます。
追加した2点と、スライダ溝の点をつないだ円弧がスライダの軌跡です。
4節リンクの節と同じで、R31.008mmになります。


2.2 形状を書く
適当に肉をつけて、押し出せばスライダヘッケンです。
形状の注意は完成後に。

このままだと足裏軌跡が上下に動いてしまうので、ロボットが振動します。
疑似ヘッケンの足裏は知見がないので、別の方の資料を参考にしてください。
足裏の設計ソフトにはLINKSというものがありますので、参考までに。




【3. うしとら(スライダ一本)】
3.1 スライダを修正する
今まで書いた疑似ヘッケンリンクでは足裏の形状を工夫しないと、振動してしまいます。
これに対して本来のヘッケンリンクでは、足裏がシンプルな円弧になりますが、リンクがロックしてしまいます。
これらの良い所を選べるのが、スライダリンクのいいところです。

下記の方針でスライダ溝を設計します。
・足が接地するタイミングは本来のヘッケンリンクを使う
・ヘッケンリンクの死点は疑似ヘッケンリンクで回避する

作図方法:
①設置させる120°の区間は、クランク中心から円弧を引く
②スライダ端は疑似ヘッケンリンクに合わせる
③間はいい感じにつなぐ
 直線でも動きましたが、円弧で接線を引いたほうが加減速が滑らかになるみたいです


※原理的には4節リンクのリンク比を可変にしているのと同じです。


3.2 形状を書く
スライダに合わせていろいろ書いた結果がこちら。

注意点は
(1)足裏とスライダのフレームに隙間を開けている。
 これは、脚にかかった衝撃でスライダが曲がるのを防ぐためです。
 足裏は折れても動けますが、スライダが曲がると行動不能になります。

(2)足裏の先端は剛性を低くしている
 脚が接地する衝撃を緩和するために、バネにしています。
 脚が完全に水平に設置すれば振動しない設計ですが、
 実際には斜めに接地したり、加工誤差で理想的な軌跡にならないため、衝撃吸収できる跳ねずに加速がよくなります。

(3)足裏を分割できるとメンテ性が良いが、根元に応力集中するので注意
 昔はよく折れました

足裏の凹凸はウレタンゴムの注型で作っています。


(今までと図が左右逆です)

この方法の良い所は、スライダ溝の設計自由度が高いことです。
例えば、両端で切り返しのリンク比を変えるのも可能です。
脚の加減速を緩やかにして振動を減らすなども可能なはずです。

からっ風ではそこまでできていませんが、応用の効く技術だと思います。
アームのスライダ溝も曲げて動作角度を調整しています。




おまけ: スライダ2本のうしとら脚を作る
私はからっ風の脚をうしとら脚と呼んでいますが、これは20009年のかわロボに出場していたた「艮(うしとら)」というロボットの脚リンクを参考にしたためです。
オリジナルの艮はスライダが2本で、90°位相の4枚構成でした。

オリジナルの書き方とは違うかもしれませんが、スライダ一本版のうしとら脚を反転して反対側にもスライダをつけると、2本スライダになります。
(作ったことはないので、動作未確認です)

2本スライダのメリットとしては、
・リンクの切り返しで死点近くを通らないため、切り返しが滑らか
 (おそらくボールベアリングは不要)

デメリットとしては、
・120°の脚を書くとくびれが細くなりすぎる
・クランクが上に上がると足が拘束されなくなり、遊びが大きい

という特徴があります。


以上


かわロボ からっ風Schwarze 3Dデータ

からっ風Schwarzeの3Dデータを公開します。
何かの参考なればよいと思っています。

3Dデータ: https://1drv.ms/u/s!AvHExNVmsJPe3uxT2ImfR2l6cx5otg?e=Rc14Ta

3Dデータ中身: 
・胴体全体(脚部品省略版)
・脚ユニットのみ(オムニ以外の全パーツ)

2019年の大会でベルトが千切れる問題等の対策版です。
まだ加工すらしていませんが・・・・。

以下データのキャプチャ画像です。

・全体図


・脚ユニット




・脚カム周辺
 

※メインの設計データ(2D)はこんな感じです。ここから3Dに起こしてみました。



部品の加工は主に
・CNCフライス(A7075、PC、POM)
・3Dプリンタ(ナイロン)
です。複雑な部品は多分3Dプリンタの外注です。
エンドミルの隅Rは基本的に省略しています。


・データのキャプチャ&公開はご自由にどうぞ
・設計の丸コピーも問題ありませんが、動かなくても知りません・・・。
・データの2次配布は禁止しませんが、できるだけ本記事を紹介してもらえると助かります。
 最新データへアクセスできるようにする予定です。
・データ使ったらコメント残してもらえるとありがたいです。(強制ではありません)

ウレタンゴムの注型

高専ロボコンの足回りに使っていたウレタン部品を見せてもらい、摩擦がいい感じだったのでウレタンの注型に挑戦しました。

今回は材料の入手性から日新レジン アダプト60Lを使用して、かわロボの足裏を作ります。
URL: http://www.nissin-resin.co.jp/color%20urethane%20rubber.htm

【製作手順】

①型とインサート部品を切削
足裏のフレームとなるインサート部品はPC板から切削。
ウレタンとの接触面は表面積が増えるように凹凸をつけ、端には剥がれ防止の返しを付けています。詳細は写真参照。


型も同様に切削し、離型用にフッ素系の撥油スプレー塗布(ちゃんとした離型剤の方がおすすめ)
今回の型は側面+下板に分割しましたが、離型時の型分割は考えた方が良いです。抜けない・・・。


左から足裏のフレーム、樹脂型、真空おひつに入れた状態

②ウレタン樹脂を混ぜる
取説通りの分量を混ぜ、全力で混ぜる。
今回は主剤70g、硬化剤23gくらいで、大部分を余らせる予定。
着色料は数滴で十分でした。

③型に液状ゴムを入れる
後述の理由で、型からはみ出すくらい多めに入れた方が良好な仕上がりでした。
厚さ5mm分くらい余分に入れています。



④減圧脱泡
脱泡容器(真空おひつ)に入れて減圧します。
完全に脱泡することはできないものの、泡が表面に集まればとりあえずOKとしています。
表面の泡は硬化後切り落とします。

真空おひつでは減圧が足りないようですが、何度か減圧→常圧を繰り返すことで、そこそこ気泡は抜けるようです。
30分くらい衝撃加えたり傾けたりして泡を抜く努力をしたのち、常圧に戻して放置。



⑤効果まで放置
離型12時間と記載されていましたが、作業時間の関係でほぼ24時間硬化しました。
表面にかなりの気泡が残っていますが、この部分は切り落とすので問題ありません。




⑥離型
型から抜くために、余分な部分を切り落とします。
怪我に注意。



余分な部分を切り落としたら、型から足裏を外します。
型には張り付かなかったものの、隙間が無いため押しても抜けないという状況に・・・。
最終的にハンマーで打ち抜きました。型は分割できた方が良いです。


切り離した面は表面が荒いが、型についていた方は綺麗な平面


足裏にも気泡は残っていますが、ちぎれない限りは気にしない方針で。
  

⑦仕上げと組み立て
バリなどを仕上げて、組み立てます。
3枚を1ユニットにしたらかわロボの足裏の完成。




【結果】
・グリップ・強度は良好だと思います
 (まだ機体の稼働時間が短いので耐久性は不明)
・コストはシリコンシーラントより高いものの、24時間で硬化するので生産サイクルは短めです。
 シリコンシーラントが削れて床に付着すると非常に滑りますが、ウレタンなのでそれは無そう。これは個人的に重要なポイントです。
・ウレタン板からの切削と比較すると気泡の不安はあるものの、グリップは良いように感じます。表面状態の影響かもしれませんが、硬度等条件が違うので、断言はできません。
 あと比較的安いので設計変更変更しやすいのもメリットの一つ。


【使用したツール】
・日新レジン アダプト60L
・竹炭 丸型真空おひつ(ポンプ付)
・紙コップ
・カッターナイフ
・ハンマー
・CNCフライス(型加工)etc


【注意点】
容器を開けた後のウレタンの液は硬化剤を入れなくても固まってしまうらしいので、開けたらなるべく早く使い切りましょう。あと服につくと落ちません。

以上