【かわロボ】スライダヘッケンリンクスライダヘッケンリンク(うしとら脚)の設計方法 技術関係 2022年09月04日 からロボの足リンクの書き方です。久々すぎてからっ風の脚リンクの書き方を忘れていたので、整理のため記録します。CADはFusion360を使っています。手順としては、1. 普通の疑似ヘッケンリンクのリンクのリンク比を検討 (180度回転するヘッケンリンクはリンクが反転するリスクがありますが、これに対してリンク比を修正したものを、ここでは疑似ヘッケンと呼びます)2. スライダで疑似ヘッケンリンクを作成3. スライダを曲げて、120度区間で完全円軌道を作る (スライダ一本のうしとら脚)おまけ:スライダ2本のうしとら脚を作る(オリジナルに近いもの)の順で設計します【1. リンク比検討】1.1 クランクとスライダの位置を決定からっ風は・クランク直径:20mm・クランク中心からスライダの位置:31mmとしています。 1.2 4節リンクを書くクランクから揺動節の距離:10.7mm揺動節の長さ:約31.008mm ※作図で出しましたクランクから足裏までの距離:50mm書き方はいろいろあると思いますが、からっ風はクランクが一番下になったときに足が最下点に来るよう揺動節の長さを決めています。この場合の本来のヘッケン比は、クランクから揺動節の距離10mmです。0.7mmクランクずらしていますが、クランク半径と比(0.7/10)をとって、ここでは7%上げと呼びます。この値が小さいほど、脚を上げる角度が大きくなりますが、加工誤差などでロックする可能性が高くなります。スライダの場合も、スライダにかかる荷重が大きくなり、ロックしやすくなりますが、スライダのほうが比較的小さい補正にできるようです。からっ風は7%上げで動かすために、スライダにΦ8のボールベアリングを入れて対策しています。1.3 可動域の確認脚の振り角が最大になるポイントを作図します。今回はリンクを拘束した後、振り角を手入力して最大値を求めました。振り角は72.9°+66.0°=138.9°です。これが120°+αを超えると、120度のうしとら脚が作れます。揺動節の長さを調整すると、前後の動作角度が変わります。うまく調整するといいことがあるかもしれません(未確認)この時点で足裏を書けば、4節の疑似ヘッケンリンクです。154.3°と18.2°は後ほど使います。 【2. スライダ疑似ヘッケンを作成】2.1 スライダ溝を書く脚が最下点になる位置で固定する(書きやすい位置でOK)先ほどの154.3°と18.2度と4節リンクの長さを使用し、脚リンクから見たスライダの位置を書きます。追加した2点と、スライダ溝の点をつないだ円弧がスライダの軌跡です。4節リンクの節と同じで、R31.008mmになります。 2.2 形状を書く適当に肉をつけて、押し出せばスライダヘッケンです。形状の注意は完成後に。このままだと足裏軌跡が上下に動いてしまうので、ロボットが振動します。疑似ヘッケンの足裏は知見がないので、別の方の資料を参考にしてください。足裏の設計ソフトにはLINKSというものがありますので、参考までに。 【3. うしとら(スライダ一本)】3.1 スライダを修正する今まで書いた疑似ヘッケンリンクでは足裏の形状を工夫しないと、振動してしまいます。これに対して本来のヘッケンリンクでは、足裏がシンプルな円弧になりますが、リンクがロックしてしまいます。これらの良い所を選べるのが、スライダリンクのいいところです。下記の方針でスライダ溝を設計します。・足が接地するタイミングは本来のヘッケンリンクを使う・ヘッケンリンクの死点は疑似ヘッケンリンクで回避する作図方法:①設置させる120°の区間は、クランク中心から円弧を引く②スライダ端は疑似ヘッケンリンクに合わせる③間はいい感じにつなぐ 直線でも動きましたが、円弧で接線を引いたほうが加減速が滑らかになるみたいです ※原理的には4節リンクのリンク比を可変にしているのと同じです。3.2 形状を書くスライダに合わせていろいろ書いた結果がこちら。注意点は(1)足裏とスライダのフレームに隙間を開けている。 これは、脚にかかった衝撃でスライダが曲がるのを防ぐためです。 足裏は折れても動けますが、スライダが曲がると行動不能になります。(2)足裏の先端は剛性を低くしている 脚が接地する衝撃を緩和するために、バネにしています。 脚が完全に水平に設置すれば振動しない設計ですが、 実際には斜めに接地したり、加工誤差で理想的な軌跡にならないため、衝撃吸収できる跳ねずに加速がよくなります。(3)足裏を分割できるとメンテ性が良いが、根元に応力集中するので注意 昔はよく折れました足裏の凹凸はウレタンゴムの注型で作っています。 (今までと図が左右逆です)この方法の良い所は、スライダ溝の設計自由度が高いことです。例えば、両端で切り返しのリンク比を変えるのも可能です。脚の加減速を緩やかにして振動を減らすなども可能なはずです。からっ風ではそこまでできていませんが、応用の効く技術だと思います。アームのスライダ溝も曲げて動作角度を調整しています。おまけ: スライダ2本のうしとら脚を作る私はからっ風の脚をうしとら脚と呼んでいますが、これは20009年のかわロボに出場していたた「艮(うしとら)」というロボットの脚リンクを参考にしたためです。オリジナルの艮はスライダが2本で、90°位相の4枚構成でした。オリジナルの書き方とは違うかもしれませんが、スライダ一本版のうしとら脚を反転して反対側にもスライダをつけると、2本スライダになります。(作ったことはないので、動作未確認です)2本スライダのメリットとしては、・リンクの切り返しで死点近くを通らないため、切り返しが滑らか (おそらくボールベアリングは不要)デメリットとしては、・120°の脚を書くとくびれが細くなりすぎる・クランクが上に上がると足が拘束されなくなり、遊びが大きいという特徴があります。 以上 PR
ウレタンゴムの注型 技術関係 2019年09月01日 高専ロボコンの足回りに使っていたウレタン部品を見せてもらい、摩擦がいい感じだったのでウレタンの注型に挑戦しました。今回は材料の入手性から日新レジン アダプト60Lを使用して、かわロボの足裏を作ります。URL: http://www.nissin-resin.co.jp/color%20urethane%20rubber.htm【製作手順】①型とインサート部品を切削足裏のフレームとなるインサート部品はPC板から切削。ウレタンとの接触面は表面積が増えるように凹凸をつけ、端には剥がれ防止の返しを付けています。詳細は写真参照。型も同様に切削し、離型用にフッ素系の撥油スプレー塗布(ちゃんとした離型剤の方がおすすめ)今回の型は側面+下板に分割しましたが、離型時の型分割は考えた方が良いです。抜けない・・・。 左から足裏のフレーム、樹脂型、真空おひつに入れた状態②ウレタン樹脂を混ぜる取説通りの分量を混ぜ、全力で混ぜる。今回は主剤70g、硬化剤23gくらいで、大部分を余らせる予定。着色料は数滴で十分でした。③型に液状ゴムを入れる後述の理由で、型からはみ出すくらい多めに入れた方が良好な仕上がりでした。厚さ5mm分くらい余分に入れています。 ④減圧脱泡脱泡容器(真空おひつ)に入れて減圧します。完全に脱泡することはできないものの、泡が表面に集まればとりあえずOKとしています。表面の泡は硬化後切り落とします。真空おひつでは減圧が足りないようですが、何度か減圧→常圧を繰り返すことで、そこそこ気泡は抜けるようです。30分くらい衝撃加えたり傾けたりして泡を抜く努力をしたのち、常圧に戻して放置。 ⑤効果まで放置離型12時間と記載されていましたが、作業時間の関係でほぼ24時間硬化しました。表面にかなりの気泡が残っていますが、この部分は切り落とすので問題ありません。 ⑥離型型から抜くために、余分な部分を切り落とします。怪我に注意。 余分な部分を切り落としたら、型から足裏を外します。型には張り付かなかったものの、隙間が無いため押しても抜けないという状況に・・・。最終的にハンマーで打ち抜きました。型は分割できた方が良いです。 切り離した面は表面が荒いが、型についていた方は綺麗な平面足裏にも気泡は残っていますが、ちぎれない限りは気にしない方針で。 ⑦仕上げと組み立てバリなどを仕上げて、組み立てます。3枚を1ユニットにしたらかわロボの足裏の完成。 【結果】・グリップ・強度は良好だと思います (まだ機体の稼働時間が短いので耐久性は不明)・コストはシリコンシーラントより高いものの、24時間で硬化するので生産サイクルは短めです。 シリコンシーラントが削れて床に付着すると非常に滑りますが、ウレタンなのでそれは無そう。これは個人的に重要なポイントです。・ウレタン板からの切削と比較すると気泡の不安はあるものの、グリップは良いように感じます。表面状態の影響かもしれませんが、硬度等条件が違うので、断言はできません。 あと比較的安いので設計変更変更しやすいのもメリットの一つ。【使用したツール】・日新レジン アダプト60L・竹炭 丸型真空おひつ(ポンプ付)・紙コップ・カッターナイフ・ハンマー・CNCフライス(型加工)etc【注意点】容器を開けた後のウレタンの液は硬化剤を入れなくても固まってしまうらしいので、開けたらなるべく早く使い切りましょう。あと服につくと落ちません。以上
タイミングプーリーS5Mの書き方 技術関係 2017年09月10日 今年作ったS5Mプーリーの書き方をまとめておきます。2mmのエンドミルで切削できるので、S3Mよりも加工が楽になります。歯先円直径 歯先円直径(O.D.)の円を書く O.D. = P × N / π - 2 × PLD P:ベルトピッチ、5mm N:プーリー歯数 π:円周率 PLD:ピッチ円直径と歯先円直径の半径方向の差、S5Mでは0.48mm歯底円直径 歯底円直径 = O.D. - (1.77 × 2)(S5Mの場合)※記事修正(19/6/25) 1.77は歯の高さです下準備 歯底・歯先円を書く。 ※図中のピッチ円は特に使用しない 歯先円直径から0.381オフセットした位置に3.25mmの直線を引く 歯先を書く 先ほど書いた直線の両端からR3.275mmの円を書く。 上で書いた円と歯先円、歯底円をつなぐ 面取りと切り下げ カタログに従って面取り。(角にR0.55) 歯の根本はエンドミルの切り残しも考えて少し切り下げておく (今回は切削データで実施) 複製してプーリーを書く 歯を複製して円周にするあとは肉抜きしたりフランジを付けたりして完成
遊星ギヤボックスの利用について 技術関係 2016年08月28日 遊星ギヤボックス大会で何人かの方に聞かれたので、まとめてみました。からっ風シリーズでは毎回アームの減速に遊星ギヤヘッドを使用しています。無印、QuadraEdge・・・電ドリFomalhaut、Jagt、Pussyfoot・・・旧KU 24:1BEEK,Gimlet・・・新KU 24:1アームの多段減速機を自作すると精度の問題等あり難しいので、遊星を使えばちょっと簡単に作れる・・かもしれません。注意点・・・出力軸付近の剛性が弱いと遊星歯車の歯面で支えることになるため歯欠けが起きやすくなります。改造して使用する場合は出力軸を両持ちにしたほうが良いです。ツカサ電工 KUギヤヘッドツカサ電工のギヤドモータ付属のギヤヘッド単品での購入は不可なので、モータとセットで買う必要ありピニオンを抜く等の加工が必要入力トルクは経験的にRS380PH,13.2Vのストールトルクの10倍程度までは壊れにくい(24:1の場合)。コスト的にはTG-05シリーズかTG-85シリーズの標準品を買うと安い。モータのシャフトはφ3mmなので、別の用途に使いやすい。ツカサ電工直販:https://www.tsukasa-d.co.jp/motor/robo.html KUギヤヘッド(の中身)と使用例電ドリギヤヘッド540サイズ以上の電動ドリルのギヤヘッド。構成はKUに近い。クラッチ入りのギヤヘッドとしても使用可能。クラッチを使わない場合は歯車だけ使うとよい。出力軸はねじが切ってあるため、使いやすいサイズに加工する必要がある。コストは安い(最近は3000円越え?) 電ドリギヤヘッドの中身朱雀技研 IGシリーズギヤボックス単体やピニオン単体で入手することができ、入手性は良好フルメタルなギヤ構成も選択できるため、強度も高い内歯車とフレームが一体のため、重量は重いが強度があるIG22,IG32,IG36,IG42があり、数字は直径となっている。380モータ等を一緒に購入すれば組み付けてもらえるサービスがある。変な改造をするよりは、そのまま使用したほうがメリットが大きいと思う。朱雀技研ストア:http://store.shopping.yahoo.co.jp/suzakulab/4a25aaeae55.html IG32とIG36Pの中身以上
タイミングプーリ(S3M)の歯先書き方 技術関係 2014年01月02日 更新日:2014/01/02いままでタイミングプーリーの書き方を間違えていたので、今後間違えないようにメモです。この書き方も間違えてるかもしれませんが・・ミスミのカタログを見ながら書いています。下準備 O.D.の円を書きます。 0.25㎜外側に長さ1.95㎜の直線を描きます。 この直線を基準に歯先を書いていきます。 歯先を書く 先ほど書いた直線の両端からR1.975mmの円を書きます。 また、O.D.より内側に1.11㎜オフセットした円を書きます。 線をつなぐ さっき書いた3つの円とO.D.をつなぎます。 これが刃先の原型になります。面取りと切り下げ カタログに従って面取りします。 歯の根本はエンドミルの切り残しも考えて少し切り下げておくといいかも 複製してプーリーを書く 歯を複製してこんな感じに 作る 切削して完成 2枚1セットで使います。性能などは既製品を買った方がよいですが、軽さや取り付けやすさで重宝しています。そこそこ回ればいいやって人にはお勧め。